世界でいちばん 不本意な「好き」



そのあとも仲睦まじく言い合うふたりを近くで見ながら、理想だなあと、ぼんやり思った。

あっこには悪いけど、わたしは甲斐くんのことを、秘かに応援してしまっている。


久野ふみとは、やっぱり時間ぎりぎりにすべり込んできた。



「アリス、おはよう」


さっきも言ってきた言葉。反応しなかったからかもう一度言われる。


「…おはよう」


渋々返す。クラスメイトに冷たいやつだと思われるとやりづらいの。



すぐにホームルームがはじまる。15分間あるんだけど励くん先生はだいたい早目に切り上げるんだ。


「あれ、新学期から目立ちまくってた金髪がいねーじゃん」


後ろの席の井ノ原くんが物めずらしそうにつぶやく。


「あー、ショーマは今日風邪で休みね」


励くん先生はさらりと答えたけど、クラスメイトたちはちょっとざわめく。ショーマ、バカなのに風邪ひいたりするんだ。…みたいな感じだろう。

でもショーマは、じつは身体が弱かったりする。

派手な見かけでごまかしてるけど。


「風邪だって。大丈夫かね」


とはいえバカはバカだからみんなにそう思われたってしかたないし、ショーマ自身もそれを望んでいるからごまかしているんだけど、隣の席の異物はそんなこと知らないから本当に心配そうに言う。なんでこっちに向かって言ってくるんだ。


「ショーマのことだから、1日しっかり眠れば回復すると思う」

「そっか。よかった」

「……」


たぶんだけど、話したことはないと思う。

そんな相手に、本当に良かったと思っていそうな表情でこぼす。


わたしだったらただのクラスメイトに、そんなふうにはなれないかも。