世界でいちばん 不本意な「好き」





学校の始業時間は8時30分。寮から校舎まで5分だから出るのは8時10分くらいにしてる。

朝起きるのは1時間ちょっと前。アラームより先に起きることがほとんどだ。


まずはじめに洗濯機を動かす。それからお弁当づくりをして朝ごはんを食べてるうちに洗濯が終わるから、下着以外はベランダに出す。


2年使ってすっかりぼろぼろになったけどまだ持ちこたえてくれているピンチハンガーと洗濯カゴと一緒にベランダに出れば「アリス、おはよー」とのん気な声が届いた。


……いやまさか。

聴き覚えのある声。

おそるおそる顔を上げると、真向いの棟のベランダで久野ふみとが手を振っていた。



「俺も今洗濯おわってさー」

「……」

「真向いだったんだなー。ちょー奇遇~」


ちょー奇遇~…じゃないし。


朝から気分は最悪。

なんでこんなに最悪な気分になるのかもよくわからないけど、たぶんわたしは、あのひとのことが好きじゃない。特別嫌なことをされたわけでもないのに悪いけど、でもなんか無理!



部屋は真向いだし席は隣だけど、感情もテンションもちぐはぐ。

向こうはこっちに合わせる気がなさそう。普段のわたしなら、ほかの人が相手のわたしなら、こっちが合わせるんだけどどうも無理。


明日から部屋干しにしようか…いやでもお日さまに当てたい。時間をずらそう…。絶対にそうする。そう決め込む。


「またあとでねー」

「……」


嫌でも教室で顔を合わせる。憂鬱だ。

だって久野ふみと、なんか、ほかの人とは違うんだもん。


何がって喩えるにはまだ関わりが薄い。それがまた気を重たくする。

年上だから?

人生が9年先輩って、もしかしたら少し、すごいのかもしれない。