世界でいちばん 不本意な「好き」



みんな、他人が素直になろうが嘘をついてようが、それが自分の邪魔をせずに都合がよければ気づいたとしても放っておく。そういうものでしょ。


それなのにこのひとは、気づいたら突っ込んでくる。

めんどくさくて、馴れ馴れしい。苦手すぎて今すぐに帰りたい。


「というか人慣れしてるって!アリスにはじめて褒められた」


その前に言った嫌味は聞こえてないらしい。すごい耳だ。

不本意な捉えかたに言い返す気力もなく、長いため息だけこぼす。これも嫌味。


それなのにこの異物はいつまでも楽しそうに笑っていて調子がくるう。

どこまでもわたしとは考えや行動が合わない。


「雑談はやめにして、次の階に行きます」

「おねがいしまーす」

「……」


はあ、うざったい。

このひとと話していると取り繕う気力が失ってく。嫌われてもいいやって思ってるからかもしれない。

とにかく居心地が悪い。


だからはやく切り上げられるよう巻いていきたいのに、化学室でも美術室でもめずらしいものなんて一切ない数学準備室でもいちいち立ち止まって話し出すから、もう本当にうんざりだ。明日励先生に苦情を入れよう。



1階には体育館と保健室と自習室と食堂・購買がある。

そのあたりは9年前と変わっていないらしく、よけいに懐かしがってどうでもいい話を延々と聞かされた。もう校舎の外の案内はやめたい…。


「アリスは食堂使ったりする?それとも購買?」

「あ、ほとんどお弁当です。…でも、食堂のカレーはおいしくて、たまにご褒美で食べに行きます」

「あ!食堂のおばちゃんのカレー、俺のときも名物で人気だったよ」

「へえ…9年前から人気なんてすごい」

「すごいな。久しぶりに食べたいなー。一緒に食べに行こうよ」

「え、や、ひとりで行ってください」