世界でいちばん 不本意な「好き」



べつにわたしは、ただ、過ごしやすい環境になるように仕向けてるだけだ。


「とにかく。久野くんのお仕事のことはわからないですけど、演技するときって自分がこの立場だったらって置き換えて考えて演じたりしないんですか?」

「もちろんそうするよ」

「じゃあ同じように考えてみれば、もっと良い環境がつくれると思います」


わたしもそうやってこの学校でがんばった。だから、成功例だよって、良かれと思って言ったのに。



「でも、プライベートは演技するわけじゃないからなあ」

「……」


いちいち、勘に障るというか、なんというか…。


「ありのままの自分が、ぜんぶ、だれにも受け入れてもらえるとは限らないじゃないですか」


紗依やあっこは、とても仲良しだ。

だけど、自分のぜんぶをさらけ出すなんて、こわくてできない。

みんなそうなんじゃないの?


「アリスはむずかしいように考えるね」


このひとは、そうじゃないの?


「べつにむずかしくなんかないです」


自分が嫌いな自分をだれかに見せるほうがずっとむずかしい。

たまにさっきみたいに飛び出してくる自分のこと、消せたらラクなのにって思う。



「俺はアリスが演技ばっかりしてるようにも思えないけどな」

「……」

「あ、今、こいつ、わたしの何を知ってんだって思ったっしょ」

「…」

「たぶん自分が思ってるよりアリスは素直だよ」


こんな話がしたいわけじゃないのに。
というか、このひととしたい話なんて何もないのに。

取り乱したところを見られ、助けられてしまったのが運のツキ。


素直だよ、なんて、言われたこともない。