3年生の教室がある一番上の階には、音楽室と図書室と地学室がある。その階からご案内。
「俺のときは図書室は中等部のほうにしかなくて行くのたいへんだったんだよ」
「へえ…」
「あ、音楽室の場所も変わったかも。前はたしか2階なー」
懐かしがる横をとぼとぼ歩く。同じ制服を着ていても違和感がないのにこのひとは今9年前の話をしてるんだな、と思うとへんな感じ。
26歳とか、オジサンじゃん。もっと年の近いアイドルだっているのになんでみんなピカロが好きなんだろう。
「アリスは楽器弾ける?」
一番端にある音楽室はなるべくはやく通り過ぎたかったのに、久野ふみとは中へ足を進めて木琴に触れた。
「…弾けないです」
「そうなんだ。俺ね、歌はあんまだけど楽器はけっこう得意なんだ」
知ってる。あっこから聞いたし、特番で見た。楽器が好きで、とくにピアノとギターはコンサートでも披露するんだって、そのときのこのひとがかっこいいんだって熱弁を聞かされた。
うまかったかどうかは、覚えてない。
「そうなんですか。それよりはやく下の階まわりたいんですけど」
「うーん…ね、アリスは芸能人とかアイドルとかピカロには興味ない感じ?もしかして嫌いだったりする?」
そんな、あからさまに眉毛を下げられて落ち込まれても困る。
どちらかといえばこのひとと世間話をするくらいなら要件だけをまっとうしたいだけだ。
さすがに面と向かって言うのは気が引ける。何も答えていないのにすでにあきらめたような顔をされると尚更。
「嫌い、というわけじゃないですけど…」
「けど?」
「…興味がない、というより、眼中にないです」
「え、ショック」
ショックだ~…とこのあと何回も繰り返し言われて、さすがのしつこさにこっちも投げやりになってくる。



