世界でいちばん 不本意な「好き」



言い合いの原因はあたふたしている。

寧音は、わたしから遠ざけようとしてショーマに近づいた。ショーマはまんまと策にはまった。という見解をしているみたいだけどちがう。

わたしとショーマは付き合ってたころから、恋なんてしてなかった。お互いの似てるところを、自分のきらいなところを、どうにか好きになろうとしていただけ。

ショーマは先に抜け出して、寧音に恋をした。
わたしも今は、後を追いかけてるみたいに、好きなひとができた。


苛々しなくて良いのに。


「ずっと思ってたけど、アリスと佐原さんは仲が悪いね」


ふみとが少し離れたところから声をかけてくる。見てたのかな。


「「いまさら?」」


あ、かぶった。


「でも、そういう関係も大切だよね。良いと思う。お互いの良いところはちゃんと認め合ってるんだし。ショーマくんは…もうちょっと、真剣な自分をまわりに見せても良いんじゃないかな。ふわふわしてるのも、何も考えてないみたいな発言も、全部ふりだよね」


ふみとが、大人みたいなことを言い出した。

このひとは9つ年上の、26歳。今のわたしたちと同じ年のころから大きなお金を稼いでいる。他人を、まわりを、考えて、見て、また考えて、自分の人生を生きてきたひと。


「プロになるほどではないから、遊びだって態度。好きならそれだけでじゅうぶんなのに。楽しくやったらいいんだよ。
佐原さんのことだって、本気になって好かれなかったら格好悪いって思ってあたりさわりなくいるけど、ただずるいだけだよ。ダサいよね。同じぶんだけの気持ちが返ってこなくたっていいじゃん。片想いも両想いも、好きなことを好きなだけやることも、ぜんぶ、ちゃんとこの先に繋がるんだよ。大丈夫だよ」

「………」

「ま、とりあえず今夜はたのしく笑顔の時間を過ごしてほしいんだ。3人とも、bottanの服、似合っているよ」


本物の大人に、姿だけ大人にしてもらったみたいなわたしたちが不恰好に並ぶ。

これ以上格好悪くなりたくないよね。

心のなかであやまりながら、ピカロが運転する車へ乗り込んだ。