世界でいちばん 不本意な「好き」



ふみとが得意げに見せてきたのは、水彩画みたいな花柄のシースルーのワンピースだった。たしかにかわいいし好みではあるけど、高そう。

黒がベースなんだけど、緑かオレンジか青の柄がある。


「アリスは青が好きだよね」

「ううん、緑にする。メンバーカラーなんでしょ」

「…なにそれすげーかわいい。早く着てほしい」


最近色物はみどりを選んでしまうようになった。すっかりアイドル久野史都にも侵食されてきてる。


「史都さんいらっしゃいませ」


今にも抱きついてきそうなふみとを避けていると、背中に何かが当たった。

そのまま後ろから肩に腕がまわる。だれなの。



「千歳離して。俺の好きな子だよ」



どきりと心臓が鳴る。真剣な顔で、そんなことを言う。

腕がぱっと離れた。


「ジョーダンすよ。前に話してくれた子ですよね。はじめまして天木です」


わ、美人な男の人。ふみととはまたちょっとちがうオーラがある。というか、たまにbottanのカタログやインタビューで見たことあるかも。


「もしかしてbottanのデザイナーさんですか?」

「そうです」


bottanのデザイナー・天木千歳(あまきちとせ)さん。スタイリストもやっていて、最近ではbottanの作品を活かした芸能プロダクションの経営もはじめて有名な人。


「このあとAlarmClockのパーティーに行くんですよね。服何にするか決まりました?」

「はい、こちらでお願いします」

「あ、史都さん良かったね。これ似合いそうって言ってましたよね。俺も気に入ってる服なのでうれしいです」


この人にまでわたしの話をしているらしい。

自分のプレミアムさは、けっきょく理解していない。