世界でいちばん 不本意な「好き」



「やきもちやきなくせに、なに悠長なこと言ってるのよ」


ちょっと、ピカロの前で何言ってんの!?


「人に嫉妬とかしないから」

「葉歌ちゃんにしてたじゃない。あれ告白だったよ。ふみとさん断ってたけど、葉歌ちゃんって絶対粘着質だからしばらくあきらめないよアレ。お姉ちゃんのことが好きだったのも気にしてるじゃない。私にはわかるのよ」


なんで告白だったことを寧音が知ってるの。こわいよ。音彩ちゃんに対しては、嫉妬じゃないもん。敵わないなって、思っているだけ。


「ふみとのキスシーン、みたことあるよ。べつに減るもんじゃないしいくらでもどうぞ」

「え、アリス、恋愛もの見んの?嫌なんじゃなかったっけ」

「嫌だったけど汐くんがみたいっていうから行ったの。その映画の主演がふみとだったの」

「それってふみとと出会う前かギリ出会ったくらいじゃね?なんなのおまえ。それノーカンだろ」


そりゃ気にならないわけがないけど、だけど、付き合ってもないし、立場も土俵も生きかたもちがう。


「気にしたらだめでしょ。ふみとのがんばることぜんぶ、がんばれって思えないと、だめでしょ」


だからこわいんだ。踏み込めないんだ。わたしにそれができるのかなって。できなかったらどうしよう。きっとふみとの相手にふさわしくない。

ファンへの笑顔。愛の言葉。だれかとのラブシーン。ちがう世界で生きていく人。

それが、わたしの好きなひとだ。


「でもふみとって、けっこう客観的に人や自分を見てるから本当に犯罪者役もできると思うんだよね。笑わない役とかもいいかも。逆に振り切ってお笑い芸人役とかもいけそう。…あ、絶対にボケのほうね。あと声もきれいだから声優さんとかも良いと思うの。ふみとなら、なんだってできるよ。のんきに妬いてる場合じゃないって」


それこそ悠長だ。

目で追うことすらできなくなっちゃう。間に合わなくて。追いつけなくて。そんなのいやだ。