くるしい思いはしたくない。くるしいときに一緒にいてほしいのは汐くんなのに、どうして汐くんがくるしくしてくるの。
どうして、わたしは、こうなるの。
次じゃだめ。後じゃだめ。2番じゃだめ。
今がいい。先がいい。1番がいい。
そうじゃなきゃだめ。
「……じゃあ、別れる」
手を放したくない。
だけど一度きりでも、ゆるせない。
気持ちが二律背反してくるしいのは、自分のせいだ。
「待ってよアリス、落ち着いて…一番好きなのはアリスだよ」
「言葉ではなんとでも言えるもん」
『…わたしのこと、一番だって言ってくれるところ』
心から思って言ってくれないとだめなんだよ。
本当は責めたくない。
仕方ないねって言いたい。
連絡くれてありがとう。
次会うときはお祝いしようって、5か月記念日を覚えていてくれてうれしかった。
一番好きなのはアリスだよって言ってくれたのだって、うれしいのに、くるしい。
「汐くんはただ優しい言葉を並べてるだけ───」
誰か止めて。
そう思ったとき、後ろから広い手のひらに口もとを覆われた。
その衝撃で携帯が手から落っこちる。
まるで何かが壊れる音。
「アリス、それ以上、思ってないこと言っちゃだめだよ」
あやすような口調で名前を呼ばれる。
「…思ってない、わけじゃない」
「うん。でも、言いたかったことは違うんじゃねーの?」
「……」
久野ふみとに、何がわかるの。



