もちろんどの学校へ入学するのか、いつから通い始めるのかは公開されていないけれど、もうすでに彼は芸能活動休止中。大ファンの友達たちは大ショックを受けている。
画面いっぱいに映し出されても白くて綺麗な肌。通った鼻筋と切れ長の二重。シュッとした輪郭と心地の良い低さの柔らかい声。
作品によってコロコロ変わるヘアスタイルはどれも似合ってしまう。衣裳もアクセサリーも彼が身に着けたものはすぐに売り切れ。
絶対音感の持ち主でピアノやギターも得意。演技やダンスもそつなくこなす。そのくせ歌は特別うまいわけではないけどくしゃりとした笑顔で難なくカバー。
これといったスキャンダルもなく、一見ゆるそうに見えて真面目なアイドル、という印象だった。
そんな久野史都がまさかそのビッグニュースの半年後、わたしの通う学校に復学して、クラスメイトになって、隣の席に座るようになるなんて神さまさえも予想していなかったと思う。
「ツキコ、俺と付き合って。とびきり大切にする」
「一番じゃないと意味ないし!」
正直言ってとんだ災難。
気持ちを乱されることになるなんて、不本意だ。



