「ふみとと出会ったからアリスはまたピアノを弾いたんだって、寧音が言ってた」
後ろめたさを突いてきたのは寧音だった。
背中を押してくれたのは穂くんだった。
だけど、絶対に、ふみとがいなかったら、もう一度ピアノを弾く選択なんてしなかった。
学童で一緒に弾いたきらきら星。
あのきらめく音と音と音たちが、こいしい。
弾きたいと思ってしまったの。
一度自分から手放した。強くいられたら手放すことはなかったはず。ふさわしくない、だけど、抗いたくなった。
「ま、おかげで寧音はよりふみとのこと好きになったっぽいけどな。好きになる理由のひとつに“アリスのこと大事に考えてくれる”って……オレ勝ち目なくね?」
「それは自業自得」
でも、寧音がわたし抜きにして好きなのはショーマのことでしょう。
これ以上こじれたら逆におもしろいかも。勝手にしてほしいよ。
「アリス、どうすんの」
「何が」
「一番にしてほしいってやつ。物理的に?ふみとじゃきびしくね?」
もっとオブラートに包んでもらいたいんだけど。
「ふみとに叶えてもらおうなんて思ってないよ。詳しくないけど、一応、国民的アイドルグループのひとりだっていうのは理解してるつもりだし、だから、こんなにこじれてるんじゃない」
こじれててもまったくおもしろくないのがわたしの恋のほう。
このまま卒業したら会わなくなるのかな。
「宮坂穂とは別れたんでしょ。ふみとさんのことが好きだって認めたから。なら告白して両想いになって付き合ってそのうち結婚したりしなよ」
分厚いアルバムを3冊抱えて戻ってきた。
「なんで別れたこと知ってるの」
「私が毎日別れてよって連絡してたの。そうしたら別れたって返事きた」
「こわいよ…」
「ちなみにオレにもやってきたからな。毎日毎日イヤガラセか!」
そんなことしてたの?愛が重い。



