世界でいちばん 不本意な「好き」



明日はお休みだから寮に外泊届を出して、ピアノを求めて向かった場所は寧音の家。

ドアを開けてくれた元親友は眉をひそめてあからさまに嫌そうな表情を浮かべた。


「連絡もしないでなんなのあんた」

「寧音だって連絡とかしてこないでしょ。どうせ遊ぶ友達いないんだからいいじゃない」

「何の用?」

「ピアノ貸して。弾きたくなったの」


そう言うと怪訝げだった瞳に光が宿った。

どうしてこのピアニストは、自分だってすごいのに、わたしのピアノを愛してくれるんだろう。

何も言わなくなって、ドアを広く開けてくれた。


玄関に見知ったスニーカーが揃っていた。


「え、ショーマいるの?邪魔しちゃう?」

「あいつが勝手にきて今はリビングでお母さんとお姉ちゃんとテレビみてるから邪魔じゃない。ピアノの部屋には入れたことないし。それよりはやくピアノ弾いて」


このふたりどうなってるの?明日休みだからお泊まりコースでしょう。寧音の家族ってまったく気にしない人たちだからショーマは何回も泊まってると思う。わたしもそう。

もちろん今日も泊まる予定。むしろ夜通し弾きたい気分。これは、絶対に、穂くんのおかげだ。まさかまたこんな気持ちになれるなんて思わなかった。


「何が聴きたい?」

「ディス・ラヴ」

「知らないんだけど…」

「うそでしょ?テイラー・スウィフトだよ!これ。私の好きな曲」


そう言って音源を聴かされる。

しばらく音楽そのものから離れてたから…きれいな声。


検索して和訳も確認する。


ちゃんと、曲を、音を理解する。