世界でいちばん 不本意な「好き」



どんなに友達がたくさんいたって、一番だって言ってくれる彼氏がいたって、きっと人はひとりぼっちだ。

ふつうはみんなそれを隠すのに、このひとは平気な顔で言う。

本当に淋しがりなのか疑っちゃうよ。


「わたし、そろそろ行くので」


相容れないな、と線を引きたくなる。


「あ、アリス、携帯震えてるよ」



ディスプレイに表示された汐くんの名前。すぐにタップして耳に当てる。


「汐くん、学校おつかれさま!もう着く?」


彼との電話は好き。優しい声が耳元で聴こえるの、なんだかうれしくなるから。

向こうがわで、彼が息をのんだのがわかった。


「…アリス、ごめん、委員の仕事が長引いてて今日は会えなそうなんだ」



足先から、冷えていく。
一切の音が、消えていく。



「…なんで?」


いや、なんでって。汐くん、理由言ったでしょ。


「突然頼まれて、断れなくて…約束してたのに本当にごめん!5か月のお祝いは次会うときでもいいかな?」


本当に申し訳なさそうな声。
選んで、言葉を発してる。

わたしのこと、ちゃんと想ってくれている。


そうわかるのに。
わかっているのに。



「汐くん、わたしは、何かの後回しにされるのはいやなの。なんでも一番にしてくれないといや。そう言ったよね。お願いして、わかってくれてたよね?」


止まって、くちびる。

止まって、声。


「委員なんて、誰かに頼んだり明日に回したっていいじゃない。突然頼んでくるほうが悪いと思う。だから、今日は…っ」


止まって、感情。

止まって、ぜんぶ、まっさらになれたらいいのに。


「なんでも一番は、むずかしいよ」

「……」


わかってるよ、そんなこと。

だけど、ほんとうのことは言わないでほしいんだよ。