世界でいちばん 不本意な「好き」






リハビリを終えて帰ろうとしたら、病院の入り口に穂くんがいるからびっくりしちゃった。


「次会うときに話があるって言うから聞きにきた」


心の準備が間に合ってないよ…!


「次に約束してるときで良かったのに…」

「でもあんたがせっかく決めたことだから心変わりしないうちに聞いてやりたいじゃんね」


優しいのか意地悪なのか。
優しいの割合のほうがはるかに多いのはもう知っているけれど、彼はそういうの、隠そうとする。


病院から学園までの道、何度も穂くんと歩いた。

ピアノの話。汐くんの話。今日何があったとか、そういう他愛のない話。だけどわたしの話、いつも曖昧だったんじゃないかな。ふみとのことを隠していた。


わたしの毎日はもうふみとばかり。はずかしいくらいいっぱいで、その名前を避けると、何もかもがぼやけてしまう。


「穂くん、…別れたい」


ひとりで勝手に決めて、ごめんなさい。

わたしの願望に巻き込んでしまった。


彼は深く息を吐いた。


「ヤダね。あんたまだちゃんと自分の気持ちおれに言ってないだろ。言ってみ」

「……ほんとうは、別れるのが不安です」

「なら付き合ってていーじゃん。意味わかんね。察してくれみたいな感じなら察さないからな」


そう言って右手を繋がれた。

付き合ってるとき、あまり繋がなかったのに。


「べつのひとが、好きなの。…ごめんなさい」


認めたくない。
この手に縋っていたい。

そうすれば、孤独を感じることはない。

不安は何もないのに。