ふみとと寮から校舎へ歩いているとショーマがうんざりするほど元気良く話しかけてきた。

聞くと、声をかけられてまたバンドのサポートメンバーをやることになったんだって。うれしそう。


「次はけんかしないようにね」

「しねーよ!なあ、またふたりで見に来てよ。練習がんばるからさ」

「本当に誘いたいのはわたしたちじゃないんじゃないの?」

「…寧音も誘う。たぶん」


たぶんって。

そういえば聞いたことなかったけど、ショーマはどうして寧音を好きになったんだろう。


「ねえ、」

「え!デジャヴじゃん!」


何、と思ったら、ふみとの下駄箱からお手紙がすべり落ちたのが見えた。

拾い上げられたそれを覗くと、また葉歌ちゃんの名前が書いてあった。


「え、はっかちゃん、手紙でどうしたんだろう」


ショーマと顔を合わせる。

これ、今度こそそういうことじゃない?


「中読めばわかるんじゃないの」

「とげとげしてんなー、なんか」

「ショーマうるさい」

「まあ、開けるのはあとでにするよ。早く教室行こう」


そう言って先を歩き出す。

前とちがう。つまり、ふみとも察しているからわたしたちに中を見られないようにしたんだ。葉歌ちゃんのため。


告白されたら、どうするんだろう。

穂菜美ちゃんのときのように知らない子じゃないし、寧音のときとちがって、…わたしを理由にする理由がない。だってわたしには穂くんがいるから。


「アリスはどーすんの」


ショーマが聞いてくる。知らんぷりしてくれたらいいのに、よけいなお世話だ。


「どーもしないよ。できるわけない」


穂くんのことだってすき。ずっとそうやって恋愛してきたの。ふみとがイレギュラーなだけ。

だから葉歌ちゃんを選んだって、何か言えるような立場じゃない。