世界でいちばん 不本意な「好き」





季節は10月も終わろうとしていてすっかり肌寒くなった。

穂くんとのお付き合いは順調で、ふみとや寧音に邪魔されることもなくなった。

話しはするけど、バイト先に迎えにきたりすることもたまにあるけど、距離はとれていると思う。


うまくいかないのはリハビリだ。
正直、もう一度弾きたい気持ちより、もうやめちゃっていいんじゃないかって考えてしまうことが増えた。

ほとんど貫通寸前まで切ってしまったから。
あまりにも痛くて叫んだ声でお母さんが駆けつけてきて、すぐに病院に連れていかれて手術をしたから神経まできれいにくっついてはいるのだけど。その後のリハビリを怠ったから、動きが悪い。


もとに戻さなきゃ、とか、そうは思わなくて良いんだと穂くんは言ってくれる。

だけどどうしたって歯痒さはあって。
逃げ癖がついてしまっているのか、もう病院をサボりたくてしかたない。でも穂くんには言いづらい。



「今日は学園長に許可をもらってるから屋上でしゃぼん玉をするの。みんな先に行ってるからアリスちゃんとふみとくんも早く行こう」


しばらく顔を出せていなかったのだけど、そんなイベントができるなんて。屋上なんて行ったことなかったから先生の言葉にわたしまでうれしくなって騒いでしまった。

屋上に上がってさらにびっくり。

柵に花飾りやメッセージボードがつけられていて、テーブルにはお菓子が並んでいる。


《アリス、おたんじょうびおめでとう!》

メッセージボードの文字を理解するより先に、こどもたちが声を揃えて言ってくれた。クラッカーが響く。