奇跡も起きないし、運はない。そんなことを思っていると4月のわたしに言ったらおどろくだろうなあ。
それとも「やっぱりね」と困ったように嗤うかな。
教室の真ん中の列のはじとはじ。
まるで本当の距離みたい。
教室は日常を取り戻していったけど、わたしは、居心地がわるくて、心がいつまでたっても落ち着かなくて、ひどい気持ちだった。
こんなんで、ふみとが芸能界に戻って、関わりが完全になくなって、やっていける?
いや、大丈夫だよ。大丈夫。わかっているもの。今日はおどろいてしまっただけ。
「アリス。今日はバイト?学童来れるなら一緒に行こーよ」
席が離れただけで絶望していた。
ただその声はクリアに聴こえて顔を上げる。
「席離れて淋しい。だからできる限り一緒にいたい」
きっともらってはいけないようなせりふを、ふみとは教室という世界で、堂々と吐く。
わたしはどうしてそんなこのひとを信じられないのだろう。その先の淋しさを、どうしてこわいと思ってしまうのだろう。
「…今日はデートだもん……」
今より淋しいきもちになるんだよ。
ふみとは耐えられるの?
わたしには、わからないよ。できないよ。
「またふられた……」
「なにそれ…ばかじゃないの」
わかってるくせに。
わたしの様子がおかしかったからわざとでしょ。
「まあ、席くらいいいよね。それ以外俺は何も変わらないし変えるつもりもないよ」
強がるみたいな口調で言う。



