世界でいちばん 不本意な「好き」




『こんなことしてわたしへの当てつけのつもり?お母さんたち、もっと月湖のこと考えるじゃない…!もう月湖の顔も見たくない。月湖の名前も呼びたくないよ!』



そんな過去を思い出して、はっと目が覚めた。

額や首もとがじんわり汗ばんでいるのがわかって深く長く息を吐く。


久しぶりに見た、お姉ちゃんの夢。

最悪な目覚め。


時計を見るといつもよりずっと早く起きてしまっていた。二度寝をする気にはならないし、と、お湯をわかし、パジャマにカーディガンを羽織って、紅茶を片手にベランダに出る。

だいぶ肌寒くなったなあ。

最近あまり勉強に時間をとれていないから、今日からちゃんとやらなくちゃ。


…ピカロのライブ、楽しそうだったなあ。


色とりどりのペンライトがファンの人数を示す。まるで満天の星空みたいだった。

動きの揃ったダンスも、アクロバティックな演出も、きれいな歌声も、彼らが努力して得てきたことが伝わった。

涙を流したり、笑ったりしているファンの人たちを、彼らが、ふみとが、幸せそうに見つめて。


そういえばわたしも、ピアノを弾き終わったあとの歓声が、拍手が、うれしかったなあと、思い出した。



ぼうっと空を眺めていると、向かいの窓が開いた。

息をのむ。


「あ、アリス。おはよー」


やわく欠伸をしながら手を振ってくるふみとに、心臓がはやく動き出す。

なんでたまたま朝早く起きただけなのに会っちゃうの?


「さっき口ずさんでた?」

「え?」

「なんかそんな気がして外出てみたらアリスがいた」


自分でも気づかないくらい無意識だったから、うるさくはしていないと思うけど…。


「ああ、俺耳いーから」

「そう…」


良すぎでしょ。はずかしいよ、なんか。