世界でいちばん 不本意な「好き」



素直になるとかなれないとか、そういう次元の話じゃなくなってきているような気がする。

あっこの家で、紗依と甲斐くんも一緒になってピカロのライブ映像を見て、そんな感情になった。


「なんかすげーな。この液晶に映ってるキラッキラ国宝イケメンが同じ制服着て同じ学校に通ってんなんて」


ぼそっと甲斐くんがつぶやく。


「え、甲斐くん、史都のことキラッキラ国宝イケメンだって思ってるんだ?」

「さよちゃん、オレだって人間だよ。いくら好きな女の好きな男でもイケメンはイケメンだし、久野史都が良いヤツなこともわかってるよ?」


へえ…意外だ。何がなんでも否定したいと思ってると思ってた。

あっこは夢中で見ているからこの会話にさえ気づかない。不憫だ。今はふみとのトークシーンを何度も繰り返して見ている。甲斐くん、本当に不憫。


「…甲斐くん、あっこじゃない子を好きになってみたら…?」


そうすればあっこももしかしたら甲斐くんの存在に気づくかもしれないし。


「アリスちゃん、オレはそんなに器用でもなければ恋愛に飢えてるわけでもアリマセン」

「そりゃ失礼しやした」


うん、本当に失礼だったね。自分のものさしで計っちゃだめでしょ。ここにショーマがいたら頭叩かれてたよ。

甲斐くんはきっと思っているし、なんだかんだ、あっこもきっと思ってる。お互いにとってお互いしかいないんだ、と。


わたしの理想のそれが目の前にある。

こういうのは何度か経験したけれど、だれかをうらやましく思うたびに、そうはなれない自分をむなしく感じてしまう。

ふみとは、うらやましいと思っても、いつか自分もなれるって信じて自分ができることをやり遂げて前を見つめている。まぶしいくらいに。