世界でいちばん 不本意な「好き」




「わたしのお母さん、ピアノ教室の先生で。お父さんはチェロニストなの。2つ年上のお姉ちゃんがお母さんと楽しそうにピアノを弾いていたから、わたしも2才でピアノを習いはじめた」

「…そうなんだ」


頑なだったわたしが口を開いたからか、ふみとは少し、おどろいた顔をした。

だけどすぐに受け入れて話を聞いてくれようと合わせて立ち止まってくれた。


「そのうちわたしは神童だって呼ばれるようになって。お父さんのオーケストラの練習に混ぜてもらうこともあった。お母さんは身体が弱くてオーケストラのピアニストにはなれなかったから、わたしになってもらいたかったみたいで、ピアノの練習はすごく厳しかった。ごはんと学校以外はピアノの時間で遊びに行けないし、ずっと、流行りのテレビも遊びかたもわからなくて友達もあまりできなかったなあ…。ピアノは好きだったけど、時々投げ出したいような気持ちにもなってた。同じお母さんの教室には音彩ちゃんと寧音もいたし。寧音、勝手にライバル視してきて、顔を合わせるといっつもイヤミ言われた。発表会に出れば他の教室の子たちからは一目置かれる存在!みたいな感じになるし大人たちは褒めちぎってくるし…期待されてて、重たくて、だけど、それでもがんばれたのは、お姉ちゃんがいたからだった」


一緒にがんばろう、
月湖の音は本当にきれいだね、
わたしの自慢の妹だよ、

お姉ちゃんの言葉と笑顔と奏でる音が、わたしの一番の味方だった。