世界でいちばん 不本意な「好き」




最近、学校に行くのが今までで一番億劫だ。


「アリス、今日もぎりぎりだねえ」


席につくと振り向いたあっこに指摘され苦笑いを返す。


「バイトがいそがしくって」


てきとうなうそ。バイトがいそがしいなんて自分のせいだしいつもどおりなことなのに。


「そっかあ。久しぶりにゆっくり遊びたいねって紗依と話してるんだけどむずかしい?」

「そんなことないよ。来月のシフト出す前に言うね」

「うん!」


あっこと気まずいような気がしてしまうのは一方的な身勝手。


授業の準備をしようと机の中を覗くと現代文の教科書が入っていなかった。

大変。わすれちゃったみたい。


別のクラスの人に借りに行こうとしたけれど間に合わず無情にも鐘が鳴った。

予習はしてきているから教科書がなくてもさほど困らないんだけれど、励くん先生、けっこう目ざといんだよなあ。


おそるおそる、隣の席の人物を見ると、ばちっと目が合った。

うわ、さいあく。なんでこっち見てるんだこのひと。


「もしかして教科書ない?」


へいきな顔で尋ねてくる。話しかけてくる。あの日以来も、明らかにわたしは避けているのに、べつに変わらない様子の久野ふみと。

小さく頷くと、ふみとが持っていた教科書が机に置かれた。


…いやいや。


「予習してきてるし、大丈夫だから」

「励くんはわすれものとか厳しく見るタイプだと思うよ。なんせ学生時代からパーフェクト人間だからね」

「…じゃあ一緒に見よう」

「俺はいいよ」


何がいいのかわからない。だけどどうやら、変わらない様子、は間違いだったみたい。


ふつうにできていないからショーマがあんなことを言いに来たんだ。

何がいいんだ、と机をくっつけようとしたら励くん先生が来てしまって、渋々、わたしだけがふみとの名前が書かれた教科書を使った。