フラペチーノが甘くて重い。口のなかでなかなか溶けてくれない。
汐くんのことも、今まで付き合ってきた人たちのことも、わすれたかった。うまくいかなかったことに倣えるほど出来てない。
「変なことではないよね」
汐くんは、本当に優しいひとだった。
「アリスがそうしたいなら、貫いたらいいよ」
こんなひとを悲しませて、失ってまでして、また一番にしてくれるひとを探そうとした。
「一緒に大切にできなくて、僕も、ごめんね」
それなのにどうしてまた一番にしてくれないひとのこと、好きになっちゃったんだろう。
それとももう出会えないのかな。
お手洗いに行くと席を立った汐くんの背中をぼんやりと見つめていると「あんた、正気?」と低い声がつぶやいた。
再会した時から冷めた視線を向けてくる、汐くんの仲良しなお友達。付き合っていたころに一度紹介されたことがあるから知ってる。
「汐みたいな良いやつのこと手放すとか正気じゃねえよ」
「…穂くんは怒っているだろうなあって思ってた」
「言っとくけど汐は喜怒哀楽の怒の感情を母親の腹ん中に忘れてきただけで何も思ってないわけじゃないからな。あんたと別れたとき、すげー淋しそうだったよ」
穂くんは汐くんとは正反対で、荒々しい口調をしていて、目つきも悪くて、近寄りがたい。汐くんはそれを人見知りなだけなんだって言っていたけれど、今はあきらかに敵意を向けられている。
それくらいわたしが汐くんに対してひどいことをしてしまったってことなんだろうけれど。



