世界でいちばん 不本意な「好き」



普段はフラペチーノなんて高くて頼まないのについつい買ってしまった。

なんせこれは汐くんの好きなもので。


「あ、アリス、同じだね」


そう。同じものを頼むと汐くんはとてもうれしそうに笑ってくれて、それがうれしくてデートのときはいつも奮発していたんだ。


あんなタイミングで休憩になってしまい、汐くんたちが取っていた席にお邪魔することになった。

「今から休憩なら一緒にどう?」って、そんなナチュラルに誘われたら断るほうがおかしいもん。


わたし、ひどいこと言ったのに。

意味がわからなかっただろうなあ。なんでそんなにって、思っただろうなあ。


受け入れてもらえなかったらと思うとこわくて、ほとんど一方的に別れようって言った。あれ以来の再会で、心臓が縮こまりそうなくらい緊張している。



「汐くん、あの、…受験勉強とか、どう?」


有名な私立大学を目指すって話してくれたことを思い出す。

それだから、なおさら、彼にとって委員をまっとうして内申点をあげることは、大事なことのひとつだったんじゃないかな。


「順調だよ。覚えててくれたんだ」

「覚えてるよっ」


もちろん、覚えている。優しくしてくれたことも、笑いかたも、好きだって言うときの口調も。好きな飲みものも、歩くときの癖も。


「……ごめんね。わたし…変なことに、こだわってて…」


自覚はあるんだ。

そんなことがほんとうに大事なのかって、他人に思われてもしかたないって。

わたしの望みのせいで誰かを傷つけるのって、きっと、正しくない。