世界でいちばん 不本意な「好き」



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「なあ、おまえらどーなってんの?」


ショーマが青い髪を深緑に染めてきたのは、あの朝焼けから一週間ほどが経ったころだった。


「人のバイト先のレジカウンターに頬杖つかないでくれる?」

「こーら。アリス、話を逸らすな」

「主語を言わないあんたが悪いんでしょーが」


深緑は初めて見たけれど、青より似合ってるのがわりと癪。あんただって、寧音とどうなってるのって、聞き返してやりたい気もするし、どうだっていいと突っぱねたい気もする。


とりあえずせっかく手際よくいつものメニューを作ってあげようとしたら「おれはこれ挑戦する」と期間限定抹茶キャラメルラテの広告を指さすから、本当に癪。

つい一昨日発売したそれを寧音が買いに来たんだもん。

なんだかんだで、元サヤってやつになるんじゃないのかな。


あーあ。癪だ。

気になるわけじゃなくって、単純に、嫉妬。


「言わなくてもわかるだろ。アリスとふみと。ふたりで仲良くサボった日から喋ってもどっかぎこちねーの、わらえっから」


こっちは失恋したんだよ。ほっといてくれ…!

バイト先まで押し掛けてきて根掘り葉掘り。元カレに。元親友の元カレでもあって、なにこれ、もしかしてふくざつ?とにかくおもしろくない。


「べつにいいでしょ。ショーマには関係ないの」

「関係はないけど、目の前でもじもじされっとうぜーのなんの」

「それなら一緒にいなければいいでしょ」

「なんだそれ。だっる」


だるい人にだるいって言われた。最低な気分。

聞いてこなくたってどうせなんとなく気づいているくせに、なんで言わせようとするのかな。


「はいどーぞ。帰ってくださいな」

「アリスって基本かわいーけど、そのかわいくねー態度はどうにかしたほうがいいからな」


余計なお世話だっつの。

ボンっとカウンターにできたての新商品を置いて持ち場に戻る。