わたしのことを一番に想えないくせに、それなのにどうして好きだなんて言うんだろうって。
ひとりで勝手に…自己中心的なことばっかり。
ステージでファンに手を振る久野史都も、いつの間にかクラスメイトたちの輪に入り始めた久野ふみとも、今目の前にいて昨日わたしに好きだと言ってくれたふみとも、べつべつになって、どれかひとつ、わたしだけのものになってくれたらいいのに。
こんな気持ちで一緒になんていられないよ。
だってわたし、自分で、ピアノを弾けなくなるようにしたんだもの。
自業自得な人生にふみとを入れちゃいけない。
「泣きそうな顔で何言ってんだよ」
「泣きそうじゃない」
「泣きそうなんだってば」
「ぜったい、泣かない」
「アリスは強情すぎる。泣けばいいのに」
その言葉がよけいに涙を引っ込めること、ふみとは知らない。
「ふみとは簡単に言いすぎだよ。…泣いたら、中途半端になぐさめるんでしょ」
「は…中途半端ってなんだよ」
彼の姿がにじんでく。
これは、まばたきをがまんしているせいだ。
「月湖、俺のこと、大人だと思って言ってんだろうけどさ……俺だってなんで伝わらないんだろって、どうしたらもっと大事にしたいこと伝わるんだろうって、思ったりしてんだよ」
そっと影が落ちてきて、肩に、彼のおでこが乗った。
髪が首をかすめて、とてもくすぐったかった。
だけどすごく、いとしくて。…くるしい。
「中途半端なんて言うなよ。すげーかっこ悪ぃじゃんね」
たぶん、傷つけた。
「ふみと……ごめんなさい」
やっとまぶたを下ろせて。
せめて頬に伝ったものがふみとのどこかに落ちて彼の一部になれたらいいのにと、未練がましいことを思った。



