世界でいちばん 不本意な「好き」




「俺ね、芸名使ってるんだけど、それは知ってる?」


突然の質問に面食らった。


「それくらいは知ってるよ。漢字にしてるよね」

「そーそー。デビューするときにさ、平仮名だと運勢が悪い!って言われて芸名で活動することになって」


半笑いで言ってるから、もしかしたらちょっとショックな出来事だったのかも。

たしかに自分が今まで名乗っていた名前の運勢が悪いなんて言われたらいやだなあ。


「芸能人に限ってではないと思うけど、考え方がそれぞれにあってさ。芸能界で活動する自分とプライベートの自分を完全に分別してる人もいれば、どんな自分も自分だって人もいて。俺は、せっかくだから売れないのも嫌だったから芸名での活動には了承したんだけど、どうしても親からもらった名前は捨てたくなくて漢字にさせてもらったんだ」


歴史のシに、都。

良い漢字だなって、思うよ。


「俺、親と仲良いの」

「や、わかるよ。今日わかったし…なんとなく、そうなんだろうなあって思ってた」


きっと幸せで、まあるい家族と過ごしてきたんだろうなあって。

芸能活動も応援してくれて。こうやって学校にもう一度通うことも、きっと見守っていてくれる。そんなひとたちが、ふみとにはぴったりだと思うから。



「どっちとも血は繋がってないんだけどね」


今日見た、お母さんとお父さんの笑顔が浮かんでくる。


「え……」

「公表してないけど実はもらわれっこなんだよね」

「……もらわ、れっ、こ…?」

「そ。名前も付けられてない状態でどっかに放置されて、生まれてからずいぶん経って母さんと父さんに出会って、ようやく名前をもらえたんだ」


思わず足が止まってしまった。