世界でいちばん 不本意な「好き」



泊まっていけば、と言うお父さんの提案にふみとは首を横に振ろうとしていたけれど、それを制止して頷いたのはわたしだった。

だって、あたたかい家庭の感じが、うれしくて。もう少しだけ仲間に入れてほしくて。



「アリスが泊まるって言うと思わなかった」


ビールを買ってきて、というご両親からの頼みで、お財布ひとつで外に出た。

学校がある場所よりも空の星がきれいに見える。月が少し昏いからかもしれない。


「ねえ、お母さんたちにわたしの話してたの?」

「え、…あー…まあ」


歯切れのわるい返事。


「まさか嫌なこと言った?」

「いや、そんなわけなくね?」

「だってなんか、言いたくなさげだからでしょ」

「はずかしいだけじゃんね」


そのわりには余裕を感じる。いつもそうだ。


「アリスの息抜きになったなら連れてきてよかったよ」


ずっともやもやしていたのに、晴れた気がする。


わたしって簡単なやつだなあ。

ぜんぶ、ぜんぶふみとのせい。



「さっきからずっとアリスにもどってる」


そう指摘すると、あ、とふいを食らったような表情をするから笑っちゃった。


「無理に名前呼んでこようとしなくていいでしょ。わたし、アリスって呼ばれたい」


はじめは、可愛い子ぶってるとか思われたらどうしようって思っていた呼びかた。だけど、下の名前を呼ばれるよりはマシだった。

こだわっているのは、ただのひねくれた感情で。
情けなくって、つらいよ。