世界でいちばん 不本意な「好き」



それに隠すようなことでもない。本当は、ただずっと意地になっているだけ。


「聞いてないわよ。あんたが作った曲なんでしょ。あまり興味ないわ」

「ひでー」


ひどい、なんて返事をしつつ、その言いかたは、聞いてないことをわかってて話を折ってくれたんだ。



「…あの。わたしの実家は、ピアノ教室をやっているんです」


心臓が、どくどくって、激しく脈をうった。


「父も母も子どもの頃からクラシックに触れてきたからか、礼儀作法はきびしく教えられました」

「そうだったの。ふみとにも教えてあげてほしいくらいだわ」

「いや俺も芸能界入ってからだいぶマシになったからね」

「そう~?見てよアリスちゃん、この不器用な骨の取り方!」

「あ、本当ですね。ふみとってこんな弱点があったんだね。食事の番組とか大丈夫なの?」

「あ、アリス、いまバカにしたろ」


自然なかたちでとなりの椅子に座った彼の手が横から伸びてきて、ぐりぐりって、髪を撫でてくる。

いじわるそうな手つきなんだけれど、撫でてくるの。


なんだかむしょうに泣きたくなって、それを隠すように俯いて、彼の広い手のひらに頭をあずける。


わたしの機嫌を損ねるのも、良くするのも、ふみとは得意だ。



その日は、お母さんがハマっているらしい恋愛リアリティーショーを3人でシリーズ1にああだこうだとダメだしして、ヤラセなのかホンモノなのかわからない他人の恋にときめいて、またああだこうだ言いながら見入って。


見切ったところでお父さんがお仕事から帰ってきて、今度は4人で和風ハンバーグを食べた。

少しだけ手伝うと「女の子がいるっていいわね」とうれしそうにしてくれたのが、とても、うれしかった。