ウッドデッキテラスからは海と向こう岸のライトアップされた街が見渡せてロマンチック。
いつもの最寄り駅から少し離れた場所ならではの特別感。
そんなところに連れてかれて、期待しないわけがない。
「新田くん、今日は、たのしかった!ありがとうね。いつも、ありがとう」
寮を出る前から言おうと思っていたとっておきの台詞をつぶやくと、新田くんは振り返って、いつになく真剣な顔でわたしを見た。
「オレ、バイトはじめてよかったって思ってます。…アリスさんと出会えたからです」
一生懸命に伝えようとしてくれている。
それが伝わってきて、ああ、よかったって思った。
「オレ、アリスさんが好きです!」
わたしが次に恋をする人。
大切にするべき人。
わたしが想うぶんだけの想いを返してもらう約束をしたい人。
緊張でふるえた手をぎゅっとにぎる。
「ありがとう!新田くん、わたしのこと、一番好きでいてくれてるんだね。うれしいなあ。わたしも新田くんがバイトに入って来てくれてすごくたのしくなったし、今日だって……」
「あ……アリスさん、ごめんなさい」
「え、?」
「オレが一番好きなのは、史都です…!」
どこまでも、
どこまでも付きまとってくる。
「同じ男として尊敬してて、かっこよくて、目標で…史都がいるからバイトも勉強もがんばれて」
友達も、バイト先の店長も、次に恋をしたいと思った人も、自分でさえも、アイドルとして生きるあいつが存在していて。
「だからごめんなさい!一番には、してあげられないんです!」
あいつの何がいいの?
なんて、聞かなくても、わかるのがつらい。
「今日はありがとうございました!また、バイトで」
「あ、うん………」
だからってなんで、わたしがフラれたみたいになってるの?



