世界でいちばん 不本意な「好き」



おいしそうなホットチョコレートは、いちごが甘さを引き立ててくれて、トッピングしてよかったとうれしい気持ちになった。


「史都もいちごトッピングしてたんですよー」

「……」


ブルーベリーをトッピングした彼が言う。どうやら久野史都に倣うところは倣うけれど自分の好きなものは大切にする人でもあるみたい。


うれしい気持ちが、複雑なものに変わってく。

なんで一緒のものだと、どきどきしちゃうんだろう。人間の心理ってこわい。


おそろいとか、一緒とか、同じとか、似せるとか…そんなのべつに、よろこぶことでもないでしょ。なんてことないでしょ。

まして、相手はふみとだ。



博物館を出るとすっかり日は暮れていた。


「何時まで平気ですか?」


こういうところを気にしてくれるところは、良いところだなあと思う。


「バイトの日は別なんだけどね、寮の門限が19時なの。だから、それまでは」

「それじゃあ、ちょっとだけ…向こうにテラスがあるの知ってますか?」


知っていたけれど、知らないふりをした。

そのほうが新田くんがよろこぶかなって思ってついた嘘に、彼は予想通りの反応を返してくれた。
こうやって恋をしてきた。


そうやって人を好きになってきた。

何も悪くない。

満たされるために行動する。


それをなんだか咎めてくるような彼の瞳を思い出して、振り払うように首を横に振る。



今日、何回思い出した?

必要ないでしょ。
意味、ないでしょ。


そう言い聞かせながら、恋をしていきたい相手の後ろを歩く。