世界でいちばん 不本意な「好き」




「学園祭も今日で最後かあ」


まるで何日もやったかのような言いかたをするからちょっと笑ってしまった。


「準備はりきってたもんね」

「なんか9年前に戻ったような感じで最近学校楽しかったから淋しいよ」

「……」


9年前のふみとは、アイドルじゃなくて、一般人として学校生活を送っていたんだ。


「ふみとって、いつからアイドル目指してたの?」

「中3の合唱祭からかなー。事務所に入ったのは高1」

「え、そうだったの?」

「うん。レッスンとかしながら学校通ってデビューが高3の春」


そうだったんだ。…ふつうの学校生活にレッスンって、たいへんだったんじゃないかな。



「昨日さ、アリスが高校最後の学園祭だから体調悪くても行く、みたいに言ってたじゃん。あれ、いーなって思った。かっこいいなって」

「え、いや、なにもかっこいいことなんてないでしょ」

「あるよ。バイトしながら勉強がんばってるところもすげーって思ってる」


べつに、なにも、ほめられるようなことはしていない。

それなのに本気で想ってくれていそうな声色に気恥ずかしくなってくる。



「俺ね、デビューしても高校は卒業するって思ってたんだけど、レッスンとの行き来だけでけっこうしんどくて、本格的に活動していくなら高校はむずかしいなってあきらめたんだよね。両方がんばる、なんて選択肢浮かばなかった」


「…それは本気でアイドルをがんばろうって思ったからじゃないの。両方、なんて、むしろぜいたくだよ」

「はは。アリスらしい考え」


わたしがバイトをして勉強をしてってやっていることとはまた違う。