世界でいちばん 不本意な「好き」



ふ、と。

屈託のない可愛らしい笑みが、わたしのどこか深いところまで落っこちてきた。



「かわいーって言ってんじゃん」



…いや、言ってないよ。

だけど、言われたよ、今。
ほめられたのに泣きそうになる。


「あ…あたりまえでしょ!」


そんなかっこ悪い言葉でごまかしたくなる。

久野ふみとは、距離が近すぎる。ずるい。いったいどういうつもりなんだろう。


クラスメイトとの仲も良くなって。
別のクラスに友達もできて。

ファンの子からは本気で想いを向けられるようになって。


わたしは、たぶん、たまたま隣の席になって、ほかの人たちより関わる機会が多かっただけで。

それなのにこんなに気にかけてもらっていいのかな。


言動、行動、表情…ふみとのすべてを、わたしの都合に合わせて良く捉えてしまいそうになる。



いつかぜったいに後悔する。



頭ではそう解っているのに心が追い付かない。

好きになったって良いことなんてない。


ふみとはわたしとは違う。
ふみとはがんばった先で手に入れたものを、大切にしてる。


まぶしくて、とても遠い。



「アリス、行こ」


今は振り返って待っててくれるけど、そのうち、どこかに帰ってく。


「…うん」


はやく、捨てなくちゃ。
消さなくちゃ。


わたしにとっての大事なことを、叶えてくれる誰かを見つけなくちゃ。

このひとは
どんなに優しくても、


世界でいちばん、を、絶対に叶えてくれない。