世界でいちばん 不本意な「好き」



そういうの、大事にしてない人なのかも。


なんだ。こんなひとの、どこがいいの?大事な時間を使ってこのひとを応援している人たちがかわいそう。

わたしみたいにって…わたしが、どれほど苦労してこの学校に馴染んだか、知らないくせに。


「久野くん」

「ふみとでいーよ」


呼ぶわけないでしょ。


「みんなの視線、見てよ。ちゃんと見て」

「え……」

「…みんな、久野くんがこんなところにいることに戸惑ってる。クラスメイトって認識はしてないよ。芸能人、アイドル、有名人、テレビで見たひと、顔がかっこいいひと……そういう目で見られてるの、わからない?」


大事にするべきものを大事にできない人って、どうしても気に入らない。


「自分がしてる妄想と現実のギャップに傷つく前にさっさと自分がいた元の世界に戻ったほうがいいよ。きっと青春なんて、久野くんにはむずかしいと思う」


あ…言い過ぎた。

すぐにそう思ったけど、あやまる気にもならない。



「アリス、きびし~」


だって、久野ふみと、ぜんぜんへこたれてないんだもん。


「いいじゃん。なにを目標にするかは自由だし、まだ初日だよ。これから、みんなに解ってもらえたらそれでいい」


前向きな発言。

いやみを言っても笑みを返される。


「…あっそ」


居心地が悪い。
きっとみんなもそうだ。