世界でいちばん 不本意な「好き」



強引なわりに靴をしっかり揃えるところとか、育ちの良さを感じる。身なりも派手ではあるんだけどスカートは長さを保っていたり、襟元にはちゃんとりぼんが結ばっていたり品もある。


「いや、急にどうしたの。練習あるんでしょ?」


今まで寮に来たことなんて一度もなかったのに。


「このあと戻る。…これ。どうせあんたのことだから意地で治そうとするだろうと思って。あと体温計持ってないでしょ。ちゃんと自分の体調がどこまで悪いかくらい把握しなさいよ」


袋から出して机に並んでいくのは、体温計と冷えピタと市販薬。

氷まくらまであるんだけど…どうしたの、本当に。ちょっとこわい。


「あんた風邪ひかないからひいたときの反動ひどいじゃん。中学の時の高熱出したときも隠して悪化して危うく肺炎で入院になりかけたのわすれたの?」


同じ思い出を持っているって厄介だ。

家からけっこう距離があるし、そもそもわりと有名な進学校だからまさか寧音と同じ高校に通うことになるなんて思ってなかった。


同じ学校だからって関わることも、もうないと思っていたのに…寧音はなにかと突っかかってくる。


だけど本当は、ぜんぶ、心配からきてることだってわかってるんだ。



「…あのときも寧音、すごい心配してくれたよね。毎日家までお見舞いきてくれてさ」

「それはあんたに友達がいないから、…有栖川先生に頼まれたから行ってあげただけだし」


ツンデレすぎるでしょ。でも、寧音がいつもこういう態度でいてくれるからわたしも素直な気持ちから逃げ続けることができている。


「まさか来てくれるなんて思わなかった」

「隠すならもっとうまく隠してよね。ほら、早く計って」


気づくひとのほうが少ないよ。