世界でいちばん 不本意な「好き」



「アリス」


だれかに引き留められる前に帰ろうと身支度をすませて静かに教室を出たんだけど、下駄箱でふみとに引き留められてしまった。


「体調平気?」

「…え、なんで」

「今朝から調子悪いだろ。でもみんなに内緒なんだろうなって思って言えなかった。どうせ無理すんなって言っても聞かなそうだし」

「……」


隠せていると思っていたのに。びっくりしちゃった。


「明日は無理すんなよ」

「…でも最後の学園祭だから」


学園祭を楽しみにしていたのはふみとだけじゃない。わたしだって、すごく楽しみにしていた。


チウガクが好き。

同級生が好き。

クラスメイトが好き。


それは、ちゃんとわたしの本心だ。


「そっか。それなら、はやく治して」

「うん、ありがとう。これからまた練習?」

「おー」


…じゃあ一緒に帰れないね。


「そ。がんばってね」


なんでふみとは、わたしが隠したいことに気づくんだろう。

人のことを良く見ているというか、見すぎというか…人が良い。しつこいけど。


そういうところが好きだな。
尊敬するな。


だけど本当に気づいてもらいたいことは気づいてくれない。

それでいい。

校舎に戻っていく背中を見て、少し、胸がいたいような気持ちになった。



今日は早く寝よう、と帰宅してすぐにお風呂の準備をしていると携帯が鳴った。寮母さんの番号が表示されていたから出るとわたしに来客があったみたい。

通して良いかだけ聞かれて頷くとすぐに部屋がノックされた。


誰か言ってくれなかったけど誰だろ…とドアを開けると、寧音がいて、びっくりしちゃった。


「え、…なに、」

「すぐ出てくからあがらせて」


いや、返事する前に上がってきてるじゃん!