世界でいちばん 不本意な「好き」




「ふみとたちのバンド聴きに行こうか」

「や、わたしは…」

「いいじゃん行こうよ。ドラムいないとかオワってるけど寧音が楽器弾くなんてイメージないから気になるし」

「たしかに、ドラムなくてよくやろうと思ったよね」


でも寧音はじつは優秀なピアニストなんだよ、とは、ほかにも質問されたら答えられそうにないから言わないでおく。


「葉歌って超二重人格だから寧音いらついてると思うんだよね」

「そうなの?」

「じゃなきゃさすがに部から追い出したりしないって。寧音みたいに潔いんじゃないんだよ。ねちねち裏で引っ掻き回してきて……まああたしも悪いところあったからお互い様だけどね」


寧音は知らないけどあっこやふみと、ショーマとは仲が良さそうだったからうまく関わってるのかな。

穂菜美ちゃんもけっこうギャップがある子だと思うけど、ひとりでいると話しかけたりしてくれるところや慕ってくれるところは救われてる。



体育館はすごくにぎわっていた。たしか前の部はダンスだった気がする。

ほかにも今日は演劇だったりロボット制作発表だったりが体育館ではおこなわれていて、バンドはトリなんだってショーマが得意げに言ってた。


後ろのほうで見よう、と言ったのに穂菜美ちゃんはぐいぐい前に向かう。しかたなくついていくけど、できることなら見てることをバレたくない。


それに今大音量で何か聴くと頭に響きそう…。ドラムがないから大丈夫かな。

明日こそ万全な状態で学園祭を楽しみたいから今日は絶対に早く帰ろうと思う。


「お、アリスと穂菜美ちゃんも来た」

「紗依!いつの間に抜けてきたの?」

「あたりまえでしょ。ピカロのファンなんだから!」


そこは学校行事でも揺るがないらしい。

ほかのクラスメイトもいてみんなはしゃいでる。たぶん、久野史都を待っている。


「紗依が持ってるやつなに?」

「ピカロのライブのペンラだよ!あとこっちはあっこから預かったふみとのうちわ。もうひとつあるからアリスはこっち持ってね」

「えっ」


ぐっと押し付けられて思わずもらっちゃった。