世界でいちばん 不本意な「好き」



今年のチウガク祭は3年生の参加率が例年より多い。

それはどうやらうちのクラスの思い出屋、そして国民的アイドル・久野史都が話題になっているからだそうだ。


思い出屋の撮影メニューは、ドキュメンタリー風・お笑い番組風・ロケ風・その他希望があればできる限りの4種類。受付担当、身支度担当、撮影班、編集班とで分かれることになった。

ふみととわたしと穂菜美ちゃんは撮影班。ショーマや紗依は編集班。あっこは身支度担当。それぞれの分担の練習を済ませてついに当日を迎えた。



「……しんどい」


連日バイトを入れすぎたせいか体調が悪い。おでこのにきびもきっとそのせいだった。


重い身体を引きずりながらベランダに洗濯物を出すとちょうどふみとがいた。

最近は朝もバンド練習をしていたみたいで、ここで顔を合わせるのは久しぶりだ。



「おはよー!」


大きく手を振ってくる。

その無邪気な姿を見ると、約10年後のわたしはあんなふうには生きられそうにないなと思ってしまう。


「おはよう」


ふみとはいつも元気だなあ。

冷たくしても、けんかまがいなことをしても、連日準備でたいへんでも。わたしとはぜんぜんちがう。


「なー、明日の自由時間一緒にまわろうよ」


どきりと心臓が動く。

わたしがその一挙一動でこんなふうになってること、このひとは知らない。


「ふみといそがしいでしょ」

「明日の夕方は暇なんだよ」

「わたしは暇つぶしってわけね」


ああもう、かわいくない返事。



「アリスとまわりたいから暇にしたんだよ。言わせんなよ」



だから、そういうの、困るってば。


「そんなの言われないとわからないし!」

「鈍感かよ!」


ちがうよ。期待したくないだけだよ。