認めたくないんだよ。
だって、きっと何も叶えてくれない。
それでもお弁当の味がしっかりするから嫌になる。
ずっと身体中を漂っていたもやもやが晴れていくような感覚。
妹がふたりいる長女な紗依らしい聞きかたにちょっと笑っちゃった。
笑えた。
久しぶりに笑った。
「…わたし、ふみとのことが、好きかもしれない」
笑っているとうれしいのにうれしくない。
話せる人ができてよかったね、ってうまく思えない。
探られるとつい打ち明けたくなる。甘えたくなる。
だけどわたしのことを全部知られたらきらわれるかもしれない。だから言えなくて、突っぱねてしまう。
構わないで。放っておいて。どうせ離れていくなら関わりたくない。
かまってよ。放っておかないで。どうせ離れていくってわかってても、関わっていたい。
わたしだけが知ってるふみとを、残していてほしい。
「うん。言ってくれてありがとう」
「……聞いてくれて、ありがとう」
久野史都なんてって思っていたわたしが久野ふみとを好きなんて、前からずっと応援していたひとからしたらどう映るんだろう。
嫌な気持ちにさせてないかな。
本当に言ってよかったのかな。わたしの都合で甘えただけじゃないかな。
「大丈夫だよ。わたしは史都よりアリスが好きだよ」
「…もしこれが流に対してだったら?」
「えっ……や、複雑ではあるけど、アリスの味方をするよ、あたし」
無理やり言わせたみたいになって笑ってしまった。
だれにも言えない気持ちなんて自分でも認められないって思っていた。蓋をして、狭い場所に閉じ込めて、消えてくれるのを待っていた。
それでもどうせ、消えてくれない。
ふみとへの不本意な感情も、ピアノへの冷えた熱も。



