「アリスとふたりなんて久しぶりだね。高2以来かな」
お弁当を持って中庭に向かう途中、紗依にそう言われて笑顔をつくった。
「そうだね。紗依をひとりじめできるのうれしい」
「そう?よかった。学園祭の準備がはじまってから、アリス、おもしろくないって顔してるもん。今だって超作り笑顔」
ぎくり。
伊達に3年間同じクラスだったわけじゃない。わたしだって紗依が体調悪かったり家のお手伝いで疲れているときはわかるもん。
それでもなんて返したら良いかわからなくて笑って流そうとしてしまう。
だって紗依もわたしも、お互いのことに気づいても問い詰めたりしない。お互いが過ごしやすいような態度をとる。それがわたしたちの通常だった。
だからまさかそんな指摘をされるなんて。
「あたしも史都に感化されてるのかも」
心のなかを読まれているみたい。
紗依と一緒にいるのは心地が良かったけれど、それは何もかも、なんとなく察してくれているような気がしていたからだ。
それをこうして言葉にされるとどうしたらいいのかわからなくなる。
ずっと仲良くしてきた紗依に嘘をつきたいわけじゃない。
「ねえアリス。史都は関係ないって切り捨てられるのも淋しいって言ってたけど、あたしはアリスがゆるせる範囲で見せてくれる姿が大好きだよ。じゅうぶんだよ」
わたしたちはきっと3年間そういう関係だった。
「だけどアリスにはきっと、強引にでも踏み込んで中の部分に話しかけてくれる誰かも必要なんじゃないかな。ずっとそう思ってた」
「さより、」
「まあそれが史都だって断言はあたしにはできないけど、初めて見たよ、アリスが泣きそうになってるところ」
「……」
「それがこたえなんじゃないかな。認めてあげないときついのはアリスだよ。だから、あっこにも史都にもショーマにも言いづらいこと、あたしが聞いてあげる」



