世界でいちばん 不本意な「好き」




「わかったよ。ふみと、放課後俺が面倒見るから待ってて」

「励くんありがとー」

「……」


励くん先生は陸上部の顧問をしているから、放課後はいそがしいはず。本当はやってあげたいけど…ほかの生徒に頼めばいいのに。みんな全力でやりたがるんじゃないかな。


悪いこと、した気分。

だけど汐くんとの約束が先だし…ともやもやをなんとか払おうとしているのに、隣からの視線を強く感じてぜんぜん払えない。



「…なん、ですか」


頬杖をついて、身体ははんぶんこっちに向けて。
なんなんだいったい。


「いやー、彼氏と仲良しなんだなあって思って。いいね、青春ってかんじ」

「オジサンみたいな発言ですね」


おこるかな。


「オジサン…!たしかに9歳も年上だもんね。そうだよねー」


おこるどころかなんか笑ってる。

9歳も年上…には見えない。童顔ってわけでもないんだけど、制服がコスプレに見えないのは芸能人だから?励くん先生が制服着てたらぜったい変だと思うもん。


「いいなー。俺の高3での目標ね、卒業することと学校行事を満喫することと青春することなの。アリスみたいにクラスメイトと仲良くなるとか制服デートとかいいよなー。ザ・青春だよね」


このひと正気?自分のプレミアムさをまったく理解してない。

このひとが制服デートなんてしてたら大変な騒ぎになるし、相手の子はたまったもんじゃない。それに…あっこのようなファンの人は、傷つくと思う。