世界でいちばん 不本意な「好き」



楽譜数冊とタクト。なんで励くん先生がこんなもの持ってたんだろう。

しかたなく音楽室へ向かうとふみとたちがバンド練習をしていた。


「勝手にアレンジしないでよショーマ!」

「寧音のキーボード主張しすぎじゃね?」

「バンドなのにドラムがいないんだからリズムとらなきゃだめでしょ。だいたいなんでドラムがいないのよバンドなのに」

「寧音がクビにしたんじゃねえかよ」

「ショーマが下手な人連れてくるからじゃない」

「まあまあ。あ、はっかちゃん、Cメロもっと重低音にしたほうが綺麗かも」

「あっことふみとくん、ツインボーカルの意味持たせたいからもっとハモって」



意見が飛び交う教室。

けんかみたいなのに、みんな、楽しそうだ。


なんとなく入りにくい空気を感じてしまうのは、わたしの勝手な気分だ。そうわかっているのにドアの前から足が動かない。それなのに見てしまう。


葉歌ちゃんとは同じクラスになったことはないけど共通の友達を通して話したこともある。気さくで可愛らしい子で話しやすい。だから、べつに、気にしなくたっていいはずなのに。

流行りのアップテンポな曲がロック調にアレンジされて流れ出す。


あ、ほんとうだ、キーボードの主張が強い。だけど目立つのは明らかにレベルが違う上手さだからだ。

ふみとの歌だって、あっこがいるからか、思っていたよりずっとうまい。


あっこの歌声も綺麗だし葉歌ちゃんのベースも味がある。ショーマだってなんだかのびのび弾けていて楽しそう。