世界でいちばん 不本意な「好き」



芸能界の友達やスタッフからカメラやライトの機材を無償で借り、携帯やパソコンでできる編集スキルをみんなにレクチャー。さらに綺麗な写真や動画を撮るコツも伝授。

動画に入れ込む音楽もふみとを中心に、楽器ができるショーマや吹奏楽部のクラスメイトたちと3分程度のオリジナル曲を何曲か制作。


フォトプロップスや写真フレームなどの小物、髪飾りや制服の装飾品を作ったり。ふみとを中心にクラス全員が手分けをして3週間しっかり準備することができた。



バンドの練習もあるのにクラスの出し物の準備まで、ふみとがはりきっているのがみんなに伝わっているのか、今まで話しかける人もいなかったのに頼られるようになってきている。

前よりずっと楽しそうに笑っているところを見かけるようになった。


隣の席で話していても途中で遮られることが多くなったし、放課後にバンド練習があるから学童の係はお休み中。バイト後の迎えも断る前にすっかり来なくなってせいせいしてる。



「なんか有栖川の雰囲気ちがくね?」


ホームルーム後、ひとりで教室を出ると励くん先生に話しかけられた。


「前髪ですかね」

「それだ。普段分けてるよな」


生徒をよく見ている。たまに結ぶけどロングヘアにかき上げ前髪がわたしの基本スタイル。一番お気に入り。


それなのに昨日からおでこのにきびを隠すために前髪を下ろしてる。

にきびなんてめったにできないのに…!


「気分転換です。それより何かご用ですか?」


話しかけてこられるとそう身構えてしまう。


「あ、これ、音楽室に返してきて」


なぜ音楽室!

いやです、と言おうとしたのにすっかり押し付けられてしまった。