世界でいちばん 不本意な「好き」





学園祭の準備が本格的にスタートした。


チウガクは内部の大学も進むのがむずかしかったりする。だから高校3年は出し物をするかしないかを各クラスで決められる。

うちのクラスはがっつりやることになって、久野ふみとは隣の席ではりきっている。


何をやるか一生懸命考えては手を挙げて「縁日」「おばけ屋敷」「甘いもの喫茶」「仮装写真館」「リアル脱出ゲーム」と提案しているけどどれもこれもど定番でちょっとおもしろい。



「アリスは何かない?」


今年の実行委員である穂菜美ちゃんから問いかけられる。

本当はこういうのは得意じゃないけれど、たいてい話を振られるしここで何かしら発言できないとだめ。毎年そうだった。


「お店に来てくれた人に30分くらい密着して青春動画作るのはどうかな」


チウガクは校舎内でのSNS禁止だけど、卒業してから載せられる良い思い出になればいいかな。そう思って提案してみたら想像以上にハマったみたいでクラスが盛り上がってくれた。


ほっとしながらその様子を見ているとふみとが「アリスすげー」と楽しそうに笑いかけてくる。

復学して最初の行事だから、本当に楽しみにしてるみたい。



「でも機材とか編集スキルが必要かもしれない。あと音源は著作権があるから現実的な案じゃなかったかも」


盛り上がってるところで申し訳ないな、と思っていると「俺の知り合いから借りられるよ」とふみとがつぶやいた。


「こういう時に芸能界にいる人間がいるなら使わない手ないっしょ」


そう言ってクラスの異物でしかなかった久野ふみとは、ついにクラスで自分の役割を手に入れた。