世界でいちばん 不本意な「好き」



あのふたりのことは何もわからない。


「わたし、もうバイト行くから」


ただ、寧音のなかにある感情とわたしのなかにこのまえからあるもやもやが同じ色をしている気がして、彼女から目を反らすことしかできなかった。


こういうところが“逃げてる”と思われる原因だ。

だけど仕方ないじゃない。
寧音と話しているとボロが出そうになるんだもん。



「アリスさんってバイトがない日は何されてるんですか?」


新田くんの質問は、雑談のようで大事な意図を含んでいるようにも思える。

レジの合間、伺うような視線は、わたしを安心させるようなそれと似ていると思う。


「最近休んでないなあ。他にもバイト掛け持ちしてるから」

「駅前のカフェでしたっけ」

「うん」

「今度休みがあったら会いませんか?」


友達として、とか、バイト仲間として、とか、そういうものじゃない気がする。


「あ、うん。シフト出たら伝えるね」

「やった!楽しみにしてます」


子犬みたいな反応。無邪気でかわいい。

最近学校だと気が休まらないから癒されるかもしれない。


平穏な生活をしていきたい。
だれかと揉めることもなく、平和に。



「アリスさんと行ってみたいところがあるんですよね」


そこまで具体的に考えてくれていると、わたしはけっこう安心するタイプだ。

顔を合わせるたびに少しずつ、期待が膨らんでいく。