居心地がわるいはずなのに、時々寄りかかりたくなるのは、図星だからなのかもしれない。
「……だけどピアノはもう、弾けないし、弾きたくない」
あんなに大好きだったのに。わたしのすべてだったのに。
ずっとずっと一番傍にあったものが一番遠くなった。
わたしを愛してくれていたはずのものが牙を剥いた。
だから代わりのものを探してる。
今度は正確にわたしを好きになってくれるものを、わたしも大事にしたい。
「がんばったんだな」
「…え……」
「何があったのかは知らないけど、ちゃんと闘おうとしたことくらいは伝わる」
本当に。
何も、知らないくせに。
「それなのに心から笑えないなんて、淋しそうだなって思う」
言うつもりもない。
そう線を引いたって無視して飛び越えてくる。
わたしのことを、良く見てくる。
だれも近づいてこなかったのに、
このひとは靴を脱がないままこっちにくる。
それじゃ、足あとが残るでしょ。
困るんだよ。
どうせふみとには戻る場所がある。
足あとを綺麗に拭うこともなくすぐに離れてく。
そういうひとだってわかってる。
わたしが気にしてしまう周りの目を、言葉を、彼は気にしないくらい強くて。敵視も好意も向けられることに慣れていて。
自分は嫌われてもいいとどこか腹を括っていて。
だけどどこにいても、だれといても、何をしていても笑えるひと。自分にとっての楽しいことを見つけられるひと。
遠ざけようとしていないと、わすれられなくなる。
そんな予感がしたから関わりたくなかったんだ。
「淋しくない。わたしは、自分を変える気はない」
どうせ久野ふみとも、
わたしのこと、置いていく。
「勝手にわたしを語らないで」
いつかきっと、見てくれなくなる。



