頼んでもないのに、いったい何がしたいの?
「呼ばないでってば」
涙がじわりと浮かんできて、困った。
こぼさないように、悟られないように、眉間に皺が寄せるて奥歯を噛む。
「その名前は……いやなこと、思い出す」
「だけどそれがアリスの真ん中に、いちばんでっかく存在してる」
「……」
「無視して生きてくほうが、くるしいだろ」
だから、それがおせっかいだって言ってるんだ。
わたしのことはほっといてほしい。
構ってくる理由が見当たらない。
無視してきたものに触れられる。それがどんなに情けないか、ふみとはわかってて、それでもしてくる。
「…くるしくなんかない」
そう簡単には、認められない。
みんなが心配そうに見てくる。よく見る双眸に、あきらめに似たため息がこぼれた。
「わかってるよ。今までみんなが聞かないでいてくれたこと。ふみとが、わざと問い詰めてきてることも…ちゃんとわかってる」
そんなに鈍感じゃない。
だけど気付きたくないこともわすれたいことも、たくさんあるんだよ。
「それでもわたしは、なにも、言うつもりない。…言う必要がないからだよ」
あたまでっかちで結構だ。
わたしは今の生活を大切にしたい。もどりたくないし、変わりたくない。
「空気わるくしてごめん。先に教室行くね」
これ以上、纏ったものを剥がされるわけにいかない。
そう思って逃げるように中庭を離れた。



