世界でいちばん 不本意な「好き」



突然打ち明けられたことに、うまく言葉が出てこない。


「アリスが理解不能って顔してる」

「とにかく今度詳しく話したいから暇な日教えてね!」

「あ、うん」


ちょうど気になるところで他のお客さまが並んだからか帰ってしまった。


本気でって…。

何かが迫ってくるような、逆に突き放されそうな、焦りに似たものが押し寄せてくる。

なにこれ。


あっこがあのひとのことを好きになろうが、それは、ただの友達の恋の話で。

わたしが焦るようなこと、なにもないでしょ。


心臓だけがどくどくと動いていて、手足も思考も、どこかに取り残されている気分になった。



わたしにとって久野ふみとは単なる久野ふみとだけど、みんなにとってはそうじゃない。

意識していたつもりだったけど、もしかしたらぜんぜんできていなかったのかもしれない。


登校のときにばったり会ったり、お昼ごはん、教室移動、学童に向かうとき。やっぱり視線を感じる。

ものめずらしいものを見る目。芸能人というフィルター。教室にいてもそうだ。わたしたち以外でふみとに話しかけている人は未だに見ない。


となりを歩くことに慣れてしまっていたみたい。

最近はその視線たちも気にならなくなっていた。



「どうしよ。1組の人に学園祭でバンドやらないかって誘われた」


だから、そんな話をしてきたときはびっくりしちゃった。

本人もそうみたいでなんだかぼんやりしている。


「え、葉歌(はっか)ちゃん?」

「うん」

「告白じゃなくてそういうお誘いだったのかよ!」


つまんねー、って態度でショーマが言う。やじうまっぽい。


「ショーマくんもギターやらないかって言ってたよ。俺が歌で、倉前さんがベース。あとはピアノできる人探してるらしい」


そう言いながらちらりとわたしに目を向けてくる。

いや、できないからね、と目で訴え返す。なんなの?