笑ったこと。あっこと紗依も笑えるようなこと…。
「あ…なんかね、コンビニバイトにふみとのファンの新人くんいるんだけど、その子が「ストーカーされてませんか?」って言ってきてね。話しを聞いてるとどうやらわたしのバイトの時間がおわる少し前から外にチェックシャツを着て帽子被ってマスクつけた人がいるんだって言うの。でもそれ…変装中のふみとなんだよ。笑っちゃった。ファンにそんなこと言われるアイドルのプライベート…あはは」
思い出したらおもしろい。
だれから見ても久野史都からはかけ離れた姿。わたしが心配することもないくらい変装は完璧なのかもしれない。
「史都、よくアリスのバイト先に来るの?」
あっこと紗依もふみとのファンだから、盛り上がれる話だと思ってした。
「そうなの。あ、同じ寮でしょ。暗いからって買い物ついでに迎えにきてくれてる。暗い道通らないのにね」
「…そうなんだ」
「今度みんなで遊ぼうね。そのときふたりがふみとの変装姿見たらきっとびっくりするよ」
「どんな史都もかっこいいもん」
だけどそれは判断ちがいで、まずい話しかたをしちゃったかもしれない。
「あの、…ごめん、ぜんぜんおもしろい話じゃなかったね。でも、ほんとうに、買い物に来たついでなだけだと思うから…」
うそ。本当は、迎えに来てくれている。
ひとりで歩く夜道よりも楽しいから、甘えてしまっていた。
あっこや紗依の気持ちを考えられていたらちゃんと断っていたはず。
そこまで考えがまわらなかった。
ううん…考えもしなかった。
最近自分のことばっかりだ。笑った覚えも、あまりない。
「あ、ううん、イヤな言いかたになっちゃってごめん!史都優しいし、アリスだってそんなつもりないってわかってるから!」
あっこは何も悪くない。



