世界でいちばん 不本意な「好き」



「アリスも抱っこできるー?」


うっ。

期待の眼差しを向けられる。
だけどわたし…動物がだめなのです。

首を横に振りながら「ごめんね」とつぶやくと「アレルギー?それとも苦手?」とふみとが聞いてくる。


「ううん。前に噛まれたことがあって、お母さんに叱られて……」



そこまで話して、はっとした。

きっと絶対に言わなくてもいいことだった。



「アリスのママ、アリスはわるくないのにおこったのー?」


猫に噛まれた傷なんてたいしたことなかったのに、それよりも叱られたことのほうが痛くてこわかった。

もうずっと前のことなのに生徒たちが不安げに見上げてくる。


「ママ、びっくりしちゃっただけだよ。大丈夫。よし!園長先生にはわたしとふみとで話しておくから中入りな」

「はーい」


駆け足で室内へ入ってく子どもたちの後ろ姿を見送る。

…視線、いたい。


「そんなに見なくてもいいでしょ」

「だって。犬とか猫とか好きそうなのに意外だなって」

「そこ?」

「…撫でる?もうおこるひとはいないよ」


子猫2匹、胸に抱いたまま傾けてくる。

黒の毛並みにハシバミ色の目がとっても可愛い。


べつに、トラウマなわけじゃない。

だけどやっぱりどうしてもあのときのお母さんの顔を思い出してしまって、首を横に振った。


「じゃあ代わりに撫でとくな」


そんな返しがくると思わなくて笑ってしまった。

なるべく関わりたくない。そう思っているのに関わってしまうのは、ふみとが良いひとなことを、もう知ってしまったからだ。