そんなことない。理由がない。
あわてて首を横に振る。へんなことを言わないでほしい。わたしは、べつにふつうだ。
「まあ、とにかく明日1組に行ってみるよ」
当の本人はさほど警戒も戸惑いも何もないようだった。そうだよ。外野がどうこう言うことじゃない。
うるさいショーマを正門から追い出して、運動部が活動に励むグラウンドの横を歩く。
トゲトゲ、しないように気をつけないと。そんなつもりはないんだけどな。
「…ふみとは、恋したいとか思わないの?」
「え、なんで」
なんでこんなこと聞いちゃったんだろう。
気づいたら口から出てた。
「だって青春したいって言ってたから。もし葉歌ちゃんの仲良くしたいが恋愛感情込みのものだったら、どうするの」
「どうもなにも、よく知らないから断るよ」
「知るために付き合うのもひとつの手じゃない?制服デートしたいんでしょ?」
「だれでもいいわけじゃないよ。俺は、好きじゃないひととは付き合わない。仕事のこともあるし」
「じゃあ音彩先生とは付き合ってた?」
心臓が、
ばくばくと、脈を打つ。
息を飲み込むことも吐くこともうまくできていない気がした。
ふみとはこっちを見ないまま、遠いいつかのことを思い出すような瞳で首を横に振る。
「音彩には伝えられなかったよ」
運動部の声から隔離されたかのように、その台詞はクリアに聴こえた。
気温はあたたかいのに、どうしてか指の先から冷えていく感覚。
恋したいのか、なんかじゃない。
一番聞きたかったことは
なぜか、これだったんだ。
「ふうん。……ダサいね」
あーあ、ほんとうに、可愛くない。
優しくて可愛らしくてわたしも大好きな音彩先生とは正反対。
「だな」
いやなことを言ったつもりだったのに何も気にしていないみたいな態度の横顔に、ひどくいらつく。



